満期保険金

あの子には渡した。あの子がマンションを買う頭金がないと言って泣きついてきた時にまとまったお金を渡したんだ。

でもあんたには何もあげていない。あんたにはずっと苦労をかけて来たからせめてこれくらいは渡しておきたいと思って。

利率が高い保険商品なんてもうこの年齢だとなくて、満期になると受け取るしかない。色々な商品を勧められるけど、何かあった時にお金が引き出せないんじゃこれからは困ると思うから、今までの様にホイホイとは預けられない。となるとタンス預金がせいぜいのやま。だから渡しておくよ。こうやって渡すなら税金かからないでしょう。お母さんは平気だよ。まだ貯めてきたお金があるから。これはお前に。

 

お母さん。

気弱になっているんだね。ありがたいし気持ちはわかるけど…

おしりが見えない生命の終わり、これからどれだけ介護が必要になって金がかかるようになるのかわからないと一緒に途方に暮れた。

頑として引っ込めないのでとりあえず受け取って私名義の定期にぶち込むことにした。それで通帳もカードも母に戻しても良いだろう。

 

私は幸い、かろうじでパートナーと2人細々と生計を立て日々の衣食住には困らない生活をしている。可もなく不可もなくといった状態だ。お母さんの援助に頼る必要のない生活に生きている。だから、お母さんのお金は全部お母さんのために使ってほしい。

 

気持ちは嬉しいんだけれど、この先は備えに備えて越したことはない。何があるかわからない。お金は大事にしよう。そうしよう。

 

ちょっとびびってしまった。しんみりもしてしまった。なんだか縁起が悪いじゃない。